mitsutabi

2019/04/19 05:55



長崎・五島列島を舞台に、自分と向き合う新しい旅の形を提案する「みつめる旅」。

 

五島の毎日の暮らしの中には、旅する人が心あらわれる風景がたくさん眠っています。

 

懐かしい感情を呼び覚まさしてくれる風景、

生きる喜びが湧きおこる風景、

大切な人と一緒に眺めたくなる風景……

 

そんな風景を、五島列島で活躍する写真家のみなさんと一つ、一つ丁寧に掘り起こしていくプロジェクトが、「毎日が絶景」PROJECT in 五島列島です。写真家さんがレンズを通して切り取る、心にしみる五島の絶景。そこから、感じること、考えること、気づくことが、きっとあるはず。

 

今回の「毎日が絶景」は、福江島で活動する写真家・廣瀬健司(ひろせ・たけし)さんが撮った魚津ヶ崎(ぎょうがさき)と野々切町(ののきれちょう)の菜の花です。



 

五島の春を告げるものといえば、あたり一面に広がる菜の花を思い浮かべる人も少なくない。3月から4月の上旬にかけてひと月ほどにわたり、優しい黄色があたりに広がる。

 

写真は、魚津ヶ崎の菜の花畑。旅行で福江島を訪れたおじさんがパレットを広げて水彩画を描いている。五島へは夫婦でやってきたという。菜の花の他にも、梅雨はあじさい、真夏はひまわりと、季節ごとの花が楽しめる魚津ヶ崎は、旅行者も地元の人もふらりと訪れるおさんぽスポットだ。朝、おじいちゃん、おばちゃんがウォーキングをしている姿もよく見かける。福江島の人にとって「ふるさと」といえば、魚津ヶ崎の菜の花や海を思い浮かべる懐かしい場所でもある。

 



魚津ヶ崎の菜の花とはひと味違うのが、石垣や畑の中に不規則に咲いている野々切町の菜の花。福江島で生まれ育った廣瀬さんの両親が住んでいる町でもある。


今は東京で暮らしている4番目の娘さんが、まだ保育園に通っていた頃のこと。ドライブ中、水量の少ない小川が菜の花に埋め尽くされているのを見つけた。川一面の菜の花に「わあ!」と驚いて車を止め、幼い娘さんと一緒に眺めたことを思い出す。



 

野々切町のあたりは、鬼岳からの溶岩質の自然石で作られた石垣がよく見られる。その黒い石肌の間に咲きほこる黄色い菜の花。そのコントラストがとてもきれいだと廣瀬さんはレンズを向ける。「桜は咲いてはすぐに散ってしまうけど、菜の花は頑張って長く咲いてる」と、今年も毎日のように眺めていたらもう4月も半ばだ。



写真を撮った人:廣瀬健司


生まれも育ちも五島列島・福江島。東京で警察官として働いたのち、1987年に五島にUターン。写真家として30年のキャリアを持つ。2001年には「ながさき阿蘭陀年 写真伝来の地ながさきフォトコンテスト」でグラプリを受賞」。五島の「くらしと人々」をテーマにした作品を撮り続けている。2011年には初の作品集『おさがりの長靴はいて』(長崎新聞社)から出版。地元の若手写真家の育成にも尽力する、五島愛の塊のような熱い写真家。