mitsutabi

2018/12/13 06:50



旅とは、自分の体と心を日常から離れた場所に置いてみること。いつもと違う風と光を浴び、いつも違う人と言葉に触れ、「非日常」で五感を満たしてみる。昨日までの連続を、一度ぷつりと断ち切ってみる。

 

感じることが変わると、考えることが変わる。考えることが変わると、やがて生きかたそのものも変化していく。旅に出る前の自分と、旅から戻った時の自分に、わずかでも変化があったなら、それはきっと”いい旅”だったと言えるはず。

 

長崎・五島列島を舞台に、そんな新しい旅の形を提案している「つめる旅」。今回「みつめる旅」をしたのは、こんな人です。


旅をした人:廣遥馬さん

1993年 静岡県出身。大学卒業後、マーケティング支援を行うのベンチャー企業に就職。キャリア支援NPOの運営を携わっていた学生時代の経験を活かし、営業マネージャーを務めるかたわら、採用や組織開発にも携わっている。趣味は野球観戦、海外旅行、古着、映画など。好きなものがありすぎて、時間が足りないのが最近の悩み。




廣遥馬さんの「みつめる旅」in 五島列島


1日目(羽田から長崎経由で鯛ノ浦)

2日目(❶蛤浜付近)

3日目(❷頭ケ島から❸桐古里・若松)

4日目(❸桐古里・若松)

5日目(奈良尾から長崎経由で羽田)


教会と海の間にぽつんと座って


五島の海って、本当に豊かですよね。

 

釣りをしていても、「頭ケ島天主堂」の前に広がる浜辺で佇んでいても、あらゆる場面でそれを感じましたね。ただ海がきれいなだけじゃなくて、振り返れば後ろに教会があったり、断崖の向こうにイエス像が立っていたり。五島の海が何かしら信仰というか、精神的なものと繋がっていることを実感しますね。

 

五島の海を前にして、何時間でもそこにぽつんと座っていたくなりました。実家が久能山(静岡県)のそばなので子供の頃から、よく高台で海を眺めていたのですが、海を見ていると「命」を感じるんですよね。ちゃんと生きてる、このままでいいんだ、と自分を肯定してもらえ、生に対する執着がふわっと緩むような気がする。そういうパワーを五島の海からもとりわけ強く感じた気がします。



 

スマホもPCもほとんど見ずに過ごして


学生の頃から長い休みがあれば、旅に出ます。社会人になってからは年に1、2回ほど、大きな旅をします。自分がまったく知らない場所で知らない人と話すことで、新しい知識を得るのが好きなんです。だから、旅先にはできる限り異文化の場所を選ぶようにしていますね。直近だとロシアやキルギス、来年はケニア、ルワンダ、ウガンダに行く予定です。これまでも、チュニジア、モロッコ、セルビア、モンテネグロ、クロアチアなど、一般的に見ると、ちょっとユニークな目的地を選んできました。

 

旅って、僕にとって「異化」の体験なんです。普段、生活している環境を当たり前に感じてしまっている自分を、まったく違う環境に引きずり出してみる。そうすることで、身に染みついたものをいったんチャラにする。すると、心身ともにすごくリフレッシュできるんです。

 

五島への旅は、国内旅行でしたが、ある意味「異化」の体験だったと思います。スマホやPCを見る必要さえほとんど感じない環境で、45日、メールの返信などの仕事もまったくと言っていいほどしませんでしたね。



 

「検索」せずに情報を集めるから楽しい


旅先は上五島(中通島と若松島)でしたが、ネットで検索してもあまり情報が出てこないこともあり、自力で一次情報を集めていました。やってみると、それがたま楽しくて。普段は、人から直接聞いた口コミよりも「食べログ」の評価の方を参考にする場合が多いのに対して、今回の旅では地元の人から教えてもらったり、自分の手足を動かして見つけた「生の情報」が一番大事でした。

 

実際にやってみると、意外に日常ではそういうことをやっていない、と気づくんです。平日はルーティンで回っていくし、週末もやることが習慣化していて、何も考えなくても物事が滞りなく進んでいく。でも、五島にいる間は、美しい自然に囲まれたこの時間と空間を、どう最高の形で生かそうかと積極的に考え、動きました。

 

助けてもらうのも旅の醍醐味


地元の人とたくさん話せたことも心に残っています。みなさん、本当に優しくて。

 

瀬渡し船のおじさんは釣りのことを手取り足取りお世話をしてくださいましたし、釣り具屋のおじさんも餌を作ってくださったり、「星が綺麗だから」とナイトクルージングに連れていってくださったり。カフェの店員の方には、釣れた魚の処理の仕方を教わった上、発泡スチロールのケースに氷をたっぷり詰めていただきました。

 

本当に些細なことかもしれないですが、とても自然に「優しさ」でもてなしてくださるのが嬉しかったですね。僕から頼んだことじゃないのに、「そこまでしてくれるの!?」と驚くほど助けていただいて。海外の旅では、そんなふうにいろんな人に助けてもらいながら進んでいくのが醍醐味だと思うんですが、五島という国内でも体験できたことが新鮮でした。

 

五島は、今後何回でも行きたいくらい大好きになりましたね。



(1番目と4番目の写真は福江島在住の写真家・廣瀬健司さん、2番目と3番目は旅行者による撮影)